PROJECT SUMMARY
どんなプロジェクト?
【なごめ】 は、名古屋のグルメを世界に発信することを目指すインターカレッジサークルです。この活動の中で、農学部2年の山下愛叶さんは、飲食店や生産現場で発生するフードロスが想像以上に多いことに気付きました。そこから始まったのが、飲食店と生産現場を結んでフードロスを削減するというプロジェクトでした。
WHAT WE LEARNED #01
食品生産の現場からフードロスを削減するという新発想
「【なごめ】 の活動では、名古屋のさまざまな飲食店から話を聞く機会がありました。その中で、飲食店には廃棄する食材が非常に多く、飲食店も大きな問題意識を持っていることを知りました。この問題を解消したいと考えたことが、フードロスについて調べるきっかけになりました」と山下さんは語ります。従来、フードロスといえば家庭で食べ残して期限が過ぎてしまった食品が問題になることが多かったのですが、山下さんが調べていくうちに、飲食店以外にもっと大きなフードロスの原因があることに気付きました。
「飲食店の廃棄食材も意外でしたが、もっと驚いたのは食品生産の現場でも大きなフードロスがあるということでした。そのような話は聞いたことがなかったので、【なごめ】名城大学支部の活動として考えてみたいと思ったんです」
農学部に在籍する山下さんが考えたのは、専門分野である農業の知識を生かし、廃棄された食品で堆肥を作り、野菜を育てられればフードロス削減のサイクルができるのではないかという構想です。さっそくSNSマーケティングスクールで一緒に学んでいた外国語学部の山本さんらに声をかけ、フードロス削減のための活動が始まりました。
しかし山本さんは外国語学部で、当時、農業に関する知識はほとんどありませんでした。
「この活動を社会に発信することがSNSマーケティングの勉強になると思い、参加することにしました」と山本さんは振り返ります。
WHAT WE LEARNED #2
飲食店さんから教えられた、計画に足りなかったもの
こうしてフードロスの削減に向けた活動が始まりましたが、廃棄された食品から堆肥を作るのは簡単なことではありません。
「最初は、飲食店で廃棄された食材を定期的に回収して堆肥にすればいいと安易に考え、企画書にまとめて飲食店に説明に行きました。しかし飲食店からは、企画自体は面白いと言っていただきましたが、同時に大きな問題があることを指摘されました」と山下さん。
それは、廃棄された食材が回収されるまで、店の近くに廃棄食材を保管しておくスペースをどうするかという問題です。廃棄食材は生ゴミに他なりません。彼らが毎日回収に行くのは現実的ではなく、店の近くに長く置いておくことは、飲食店にとっても衛生的に好ましくありません。
「そこまで考えていなかったので、活動は最初から大きな壁に直面しました。みんなで話し合い、まず私たちが農業をもっとよく知らなくてはならないという結論になりました」と山下さんは話します。


WHAT WE LEARNED #03
農業体験を通して、農業の難しさと大変さを実感する毎日
そこで春日井キャンパスにある農学部附属農場に依頼し、その一角をプロジェクト専用の農場として使わせてもらい、野菜の栽培を体験しながら学ぶことにしました。
「教室での授業とは違い、農場での経験は初めてのことばかりでとても新鮮です。特に、店で提供できるような野菜を作る難しさを実感しています。農作物を相手にすることがどれほど難しいか、そして農家の職人技がどれほどすごいかを思い知らされる毎日です」と山下さんは話してくれました。
外国語学部の山本さんも、初めての農業には苦労させられているそうです。
「私も授業の合間を利用して週に1度は農場を訪れ、耕運機で畑を耕したり、除草をしたりしています。夏場などは1週間もすれば農場は雑草だらけですから、まさに自然との闘いという感じです」
同時に、山本さんは活動をInstagramで紹介するなど、SNSを通じて情報発信を行っています。
「発信を見て興味を持ってくれた企業を取材し、【なごめ】 のサイトで紹介させていただいています。今の私たちにとって、こうして少しずつ実績と信頼を築いていくことが非常に重要だと思っています。また、これは私にとってもSNSマーケティングの勉強になります」


NEXT STEP
大きなプロジェクトだから、小さな課題を一つずつ解決する
現在の目標は、まずお店に出せる野菜を自分たちの手で作ることです。
「2025年度中には、農場のプラントを使わせてもらい、廃棄された食材を堆肥化するところまで進めたいと思っています。他にも、最初から一般の飲食店をターゲットにするのではなく、スモールスケールで実績を作るため、まずは本学生協のレストランと協力してフードロスのサイクルを作るという計画もあります」と山本さん。
一方、山本さんは別の方面からもプロジェクトの推進に取り組んでいます。
「たとえば他大学に声をかけてフードロスのイベントを開催するなど、多くの学生が農業に関心を持つきっかけになる仕掛けを企画しています」
そんな彼らの活動をあたたかく見守るのが、農学部の黒川裕介助教です。
「彼らが自発的に農業の難しさと大変さに気付いてくれたことをうれしく思います。というのも、彼らがチャレンジしているのは、それほど難しくて大変な農業の問題を解決するという大きな目標。だからこそ、生協のレストランへのアプローチや、他大学の学生を巻き込むといったことが重要になります。どんなに大きな問題でも、まず目の前にある小さな問題を一つずつ解決することが、成功に近づいていくのですから」
農業を通してフードロスを削減するという彼らのプロジェクトは、これから本番を迎えようとしています。
左から農場スタッフの増中先生 、山本悠人さん(外国語学部2年)、山下愛叶さん(農学部2年) 、黒川裕介助教(農学部)